雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】
第1章 LessonⅠ 憂鬱な夜には
輝がこの誰もが羨む本社に入社し、総務部に配属となったのは今から九年前になる。以来、ずっと異動もなく、今では〝本間の局〟と若い社員たちから怖れられる立派な中堅社員となった。
営業の長瀬敦也というのは、輝よりは一年遅く入社してきた。立場上は後輩なのだが、敦也は浪人しているから、実年齢は同じである。別に輝はこの敦也と付き合っているというわけでもなく、恋人同士というわけでもない。ならば何故、美奈子がご注進に及んで、ああまで動揺したかというと、それなりの理由があった。
数年前のバレンタインまで話は遡る。輝は敦也が入社以来、ずっとひそかに憧れていた。敦也は嵐というジャニーズの人気グループのナントカというタレントに似ているらしい。らしい、というのは、輝はそういった芸能界にはまったく興味がなく、そのタレントの顔どころか名前すら知らないからだ。
営業の長瀬敦也というのは、輝よりは一年遅く入社してきた。立場上は後輩なのだが、敦也は浪人しているから、実年齢は同じである。別に輝はこの敦也と付き合っているというわけでもなく、恋人同士というわけでもない。ならば何故、美奈子がご注進に及んで、ああまで動揺したかというと、それなりの理由があった。
数年前のバレンタインまで話は遡る。輝は敦也が入社以来、ずっとひそかに憧れていた。敦也は嵐というジャニーズの人気グループのナントカというタレントに似ているらしい。らしい、というのは、輝はそういった芸能界にはまったく興味がなく、そのタレントの顔どころか名前すら知らないからだ。