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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第1章 LessonⅠ 憂鬱な夜には

 だが、敦也はその嵐のメンバーのナントカに似ているということで、社内でも常に注目を集めていた。数年前、輝は営業部まで行き、こっそりと敦也のデスクに手作りのチョコレートと思いのたけを控えめに綴った手紙を置いた。
 ところが。何と敦也の使っているデスクだと思い込んでいたのは、新人の岩田という男のもので、輝は勘違いをしてしまったのだった。また、この岩田という男がとんでもないお調子者の軽薄人間だったことから、事は厄介になった。実際のところ、岩田があそこまで騒ぎ立てなければ、輝が敦也のことを想っているなんて、誰にも知られずに済んだろう。
 あろうことか、輝が両手の指を火傷してまで涙ぐましい努力をして拵えたチョコレートを〝豚の餌にもならないような不細工な〟と言い、数時間かけて考え出した告白文を〝幼稚園児にでも書けそうな稚拙なラブレター〟と酷評した。

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