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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第1章 LessonⅠ 憂鬱な夜には

 しばらく夜空から舞い降りる雪と教会の美しくも幻想的な眺めに見惚(みと)れていた輝だったが、ふっと我に返った。
―あなたは誰?
 隣を振り返り、訊ねようとしたその瞬間、すべてが消えた。輝はただ一人、白いドレスを着て立っているだけ。赤々と灯りが灯っていた素朴な教会もなく、雪もない。ただ荒れた野原が際限なくひろがっている。そのただ中に、輝は所在なげに佇み途方に暮れている。
 慌てて隣にいた男を捜したけれど、もちろん、男もまた跡形もなく消えていた。
 あなたは一体、どこの誰だったの?
 輝は懸命に周囲を探してみたが、人影はおろか、犬猫も見当たらない。あれほど降り積もっていた雪も見事なまでに消え果て、漆黒の空には冷たく凍るような白銀の満月が輝いていた。

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