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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第1章 LessonⅠ 憂鬱な夜には

 手を伸ばし、輝の髪に落ちた雪を優しく取ってくれたひと。所詮は夢だといえばそれまでだが、あまりにもリアル感のある夢だけに、なかなか、それが夢であることを受け容れられない。
 眼が覚めたのは、その直後であった。気がつけば、輝の頬は濡れていた。隣にいてくれる人がいることがこんなにも心満ち足りるのか。夢ではあるが、知ってしまった今、一人でめざめる現実が余計に身にしみた。
 結婚だとかウェディングドレスのことばかり考えているから、こんな妙な夢を見てしまったのだろう。結局は、そう結論づけた。
 幸せな夢は長くは続かず、いつか醒めるもの。いつか有名な女流エッセイストの書いた一文がふと思い出された。それにしても、よりにもよって、ウェディングドレスを着た夢を、しかも花婿が側にいる夢を見るなんて。それこそ会社の連中が知れば、〝結婚しない女は気の毒だね〟と憐れみと嘲笑の対象にされかねない。

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