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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第2章 LessonⅡ 心ときめく記念日

 それは確かに吉瀬の妻が怒るのも頷けた。突然、夫が辞表を出して職を失う。辞めさせられたのならともかく、そうでない限り、妻であれば理不尽で責任感のない行為に腹を立てるはずだ。
 その時、吉瀬が輝の気持ちを読んだように言った。
「幸か不幸か子どもはいませんでしたから、それほど生活に困ることはなかったんですよ。退職金も出ますし、貯金も少しはありましたからね。しばらく休んで、次の仕事をしようかくらいに軽く考えていたんです」
「―」
 吉瀬の妻の怒りはもっともだとは思えるが、かといって、吉瀬が永遠に働かないと言い出したわけでもないのに、離婚までする必要があったのだろうか。
「妻が出ていったのは、俺が新しい仕事をすると言い出したときなんですよ」
「え、それはまた何で―」

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