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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第3章 LessonⅢ 悪意ある噂

「その牧師は子どもがいなかったため、養子が跡を継いだのですが、その人も病気で早くに亡くなりましてね。もう、この教会で牧師をやろうという人がいないんですよ。一度は取り壊そうという話まで出たんです。でも、それはあまりに忍びないし、地域のために貢献した初代の意を無にはできないということで何とか残すことになりました」
「そう―なんですか」
「今はこの町内の人たちが交代で掃除とかして、細々と温存しているような状態でね」
 吉瀬は説明を終えると、バッグを地面に下ろし、中から機材を取り出し始めた。
「でも、大丈夫かしら。あんまり長くいると、ドレスが汚れそうで不安だわ」
 輝が裾の方を気にしながら言うのに、吉瀬は笑った。
「このドレスは裾も地面にはつかないし、何とかいけるんじゃないかな。後の二つだったら、絶対に無理だったでしょうが」

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