テキストサイズ

キレーな顔した狼さん。

第16章 12.5匹目

「………」

「………」

─パタン

弁当の中身を見て、思わず言葉を無くした俺と瑠樹。

そして、俺は静かに…弁当の蓋を閉じた。

だって、すんげぇっぐちゃぐちゃになってたんだよ!?

「なんで……あっ」

「思いあたる節があるようで?」

「うん…」

①階段をかけ上がる
②人とぶつかる
③階段から落ちる

ダメだ…思いあたる節が有りすぎる…

「はぁ~…まぢかよ」

ぐちゃぐちゃの具たちを見つめて、
俺は肩を落とした。

「良いじゃん?味は変わんないだろうし」

そんな俺を慰めるためか、瑠樹はさほど気にすることなく俺の弁当の中からウインナーを摘まむと口に入れた。

「ん、うまい」

「あっ、まー…そーだけど…つか、こーなったのお前のせいなんだけどなっ」

素知らぬ顔の瑠樹がムカついたのと、
瑠樹が口にしたウインナーに名残惜しさを感じて、

俺はつい、瑠樹のことを睨みながら余計なことを言ってしまった。

「え?なんで…俺?」

「あ、いや…」

ヤバいと思った時にはもー遅くて、
瑠樹は俺の首筋に舌を這わせる。

「んっ…ちょ」

「言って?言ってくんないとやめないよ?」

「~~わかった!わかったからっ」

─パッ

俺が言った途端に口を離す瑠樹。

「~~~っ」

「ほら、はやく。」

くっそ…

「それは…」

「それは?」

「俺が少し遅れ気味だったから…
走って階段登って来たのにっ

…お前が…瑠花と、何か話してっから…」

「え?」

「だからっ…俺…テンパって…気づいたら階段降りてるし…人とぶつかるし…
階段から落ちるし……」

「………」

「…なんか言えよ。」

瑠樹が聞きたいっつったから言ったのに…何で黙るんだよ。

「何だ……」

「?」

耳元で聞こえる瑠樹の声に少しむず痒くなる。

「…俺が怒ってたのは、
何で汐里を助けたのが俺じゃなかったのかな…

ってゆーのと、それを助けたのが瑠花だったってことにムカついたから」

突然明らかになる、瑠樹の拗ねていた理由。

「え…んなこと言ったって…」

それに戸惑いながらも、動揺を素直に口にした俺。

「解ってるよっ…仕方ないって…
でも…俺が助けたかった。」

…瑠樹…

「それと」

まだ、あんのか…?

「汐里にあんなに言ったのにっ、
汐里が瑠花って呼び捨てで呼ぶから…」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ