
愛して、愛されて。
第8章 壊れる音
いきなりのディープなキスに、俺の身体からは力が抜け、グタりと兄さんに寄りかかる。
「はぁ、、、はぁ、、んっ、」
俺の呼吸の音が、妙に生々しく感じた。
力が、入らない。
いつもそうだ。兄さんは強引に、俺の力を奪っていく。
「だめだよ。行かせない。」
ーーー今のあいつには、触らせない。
そう耳元で囁かれ、俺は顔を歪めた。
なぜ。兄さんだって、恭と変わらない。
兄さんの方が、酷いことをするくせに。
どうして俺を、自分の所有部のように扱うんだ。
俺のことが嫌いなら、はっきり言って欲しい。俺は兄さんの、物じゃない。
言いたいことがたくさんあるのに、何故か口にできなかった。
俺を抱きしめる兄さんが、少しだけ震えていたからなのかもしれない。
「、、、っ。」
兄さんの温もりは、やっぱり安心できるもので。
抱きしめられている所が暖かくて、ずっとこのままでいたいとさえ思った。
どうしてだろうか。
酷いことをされるのは分かってる。
だけど、俺の中で何かが揺れ始めていることだけは確かだった。
