愛して、愛されて。
第9章 狂気の矛先
「いやだ。いやだよ、恭。ごめ、ん。ふっう、ごめっ、、、」
しゃくり上げながら発する言葉に、返ってくる返事などなかった。
『奏太!』
ただ、優しく笑って俺の名前を呼ぶ恭の姿が浮かんで消えていく幻覚のようなものを、俺は涙を流しながら見つめた。
明日から、俺は何に縋って生きていけばいい。恭がいない日々なんて、俺には耐えられない。
「っ、恭。」
恭の名前を呼びながらも、頭に浮かんだ別の人物にハッとした。
なんで、なんで兄さんの顔が浮かぶんだよ。
胸にはぐるぐるとした何かが渦巻いていく。
それが苦しくて、俺は目を閉じる。
俺の髪をクシャりと撫でる兄さんの手の感覚が蘇り、俺はもう一度意識を手放した。