愛して、愛されて。
第9章 狂気の矛先
恭は俺を、鋭く睨んでいた。恭のこんな顔なんて見たことがない。ハッと息を呑んで、言葉を探す。
やばい、声がでない。恭に睨まれたことなんて、今まで1度だってなかった。あまりの冷たさに、背中に汗が伝ったのを感じた。
「恭、、、?」
「話すことなんて、ないだろ。」
ピシャリと言い切られた言葉に、ヒュッと息をのむ。ショックを隠しきれなくて、恭から目を逸らした。
「で、でもっ」
恐怖心が沸き起こりながらも、どうしても諦めたくなくて必死に声をあげた時だった。
「うるさいな。」
「きょ、う?」
あまりにも低い声で、恭は俺を否定する言葉を口にしたのだ。
ああ、どうしよう。表情が思い通りに作れない。恭の冷たい目が、俺を強く睨みあげそしてもう1度口を開いた。
「もう、戻れないだろ。」
その言葉を発した後、恭は迷わず俺に背を向けた。どんどん離れていく恭を呼び止める言葉も思いつかない。追いかけることなんて、できるはずがなかった。
拒絶。はっきりとそれを感じてしまった。確かめる必要すら、最初からなかった。
あれだけ強く睨まれ、うるさいと否定されたのだ。もう、認めるしかないじゃないか。