愛して、愛されて。
第9章 狂気の矛先
「ただ、、、」
伊勢谷先生がボソッと呟いた言葉に俺が反応した瞬間、俺の目もとに小さな刺激が走った。
伊勢谷先生の細い指が目の下を撫でているのだと気付くにはそう時間は掛からなくて、驚いて顔を後ろに引く。
するとそれに合わせて手を伸ばす伊勢谷先生は、目を細めて口元を緩ませた。
「目が腫れている理由に興味があってね」
ハッとして目を逸らし、俯きながらなんでもないと答えると、伊勢谷先生は俺の髪の毛をさらりと弄ぶように撫でながら言った。
「君を家まで送るよ。車の中で話したいこともあるんだ。」
「えっ、いや!」
「いいから。」
家まで送ると笑う伊勢谷先生にか断ろうとする言葉を遮られ、無理やりベットから引っ張り出された。
「っ!?」
ズンズンと歩いていく伊勢谷先生に腕を引かれ、ただ黙って付いていくしかない。
俺は小さくため息をついた。諦めて今日は家まで送ってもらうことにした。
俺の手を引きながら、伊勢谷先生が妖しく笑っていたことなんて。
俺は知るはずもなかったんだ。