愛して、愛されて。
第9章 狂気の矛先
恭side
なにやってるんだ、俺は。馬鹿じゃないのか。
自分の醜さに吐き気がする。放課後、誰もいない教室で俺は奏太の傷ついたように歪んだ表情を思い出していた。
『もう元には戻らない』と言って振り払った奏太の手。大切な親友のーーー愛してやまない人の手を、俺は振り払ってしまった。
元に戻れないなんて、本気で思ってるわけじゃない。
話しがしたいと駆け寄ってきた奏太を見て、それは確信した。
だけど、どうしてもその手を受け入れられなかったのは、俺の心の問題だった。
昨日。義兄さんにキスをされていた奏太の顔を思い出す。そして、冷静さを取り戻していたはずの俺の頭は
また嫉妬という醜い感情に支配された。
奏太が望んでるのは、俺が望んでいる関係じゃない。今までと同じようななんの変哲もない親友に戻りたいだなんて、そんな話聞きたくもなかった。
冷静の欠けた言葉と行動が、奏太を傷つけた。
「最低だな、俺。」
奏太はきっと今一人で泣いてるだろうな。きっと、昨日のことで俺に嫌われたと思ってる。
そうじゃなかったのに。そんなんじゃ、ないのに。