愛して、愛されて。
第9章 狂気の矛先
会いたい。奏太に会って、謝らなくてはいけない。
朝言った言葉をちゃんと訂正して、きちんと話さなきゃいけない。
『ちがうよ。そうじゃない、ごめんな。』
そう言って、早く抱きしめてやりたい。
そして昨日みたいに、嫉妬に駆られたまま気持ちを伝えるんじゃなくて。
落ち着いて、最初からきちんと気持ちを伝えよう。
もし、俺が望んだ答えが返ってこなくてもそれは奏太が決めることだから、俺は受け止めてやればいい。
そしてまた、親友として傍にいればいい。
こんな単純なことに、なぜ奏太を傷つける前に気づくことができなかったんだろう。
どうしようもないバカ野郎で、ごめんな。奏太。こんな馬鹿な奴を、許してくれるだろうか。
変わらず傍にいてくれるだろうか。
奏太なら、きっと。優しく笑って、家に泊めてくれた奏太を思い出して口元が緩んだ。
ーーーとりあえず、今日は帰るか。
明日、話せばいい。なにも入ってない鞄を肩にかけて、俺は教室を後にした。
俺は、なんて馬鹿で救えないクソ野郎なんだーーー
改めて思い知らされたのは、校門を出たすぐだった。
目の前から走ってくる、見覚えのある車。あれ、誰の車だったか。考えるひまもないまま、車が横を走り抜けた。
「っーーー……!?」
運転していた男。見間違えるはずはない。アレは確かに、数学の教師だ。
奏太を時々嫌な目で見ていた、伊勢谷だ。
いや、ちがう。そんなことはどうでもいい。伊勢谷なんて、どうでもいい。
ただダメなことは、伊勢谷が運転する車の助手席でグッタリと眠っている奏太だった。
ちょっと待てよ。やばい。
体が固まって、息が止まるかと思った。
なんで、あいつの車に奏太が乗ってる?
なんで、奏太は眠ってる?
っーーー!
いやらしい目をした伊勢谷の笑顔が頭に浮かび、ハッとした。
そんなの答えは一つじゃないか。