愛して、愛されて。
第3章 日常と、
瞬間、強い力で引っ張られ、俺は雄飛さんの胸に飛び込んでしまった。
「なっ…雄飛さん!?」
「軽いね」
耳元で、雄飛さんが色っぽい声を出した。
ゾクゾクと、熱が俺を犯していく。
「離せってば…!」
雄飛さんの胸を、力強く押し返そうとした時だった。
「せっかく、俺が種を撒いてあげたのになー。お仕置き、されたんでしょ?
なんで奏太君さ、」
“壊れてないの?”
「…え、」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
だけど次の言葉で、俺の体の熱が、一気に引いて行くのがわかった。
「秦もさ、早く君を壊してくれないかな。
そうすれば奏太君は…―」
―――バッ!!
その言葉の続きは、何故か聞いてはいけない気がして、
思いっきり、雄飛さんの胸を押した。
その拍子に少しだけできた、俺と雄飛さんの距離。
一秒もかからないくらいの速さで、この場所から逃げた。
無我夢中で走り、この店から外に出る。
「はっ、はぁ…はぁ!」
息苦しさに、ズルズルとしゃがみ込んだ。
雄飛さんが追いかけてくる様子はない。
安堵の息を吐き出した瞬間に、背中にゾクリと悪寒が走った。
“そうすれば奏太君は…―”
あの言葉の続き。
分からない、分からないけれど。
なにか恐ろしいことの様な気がして、震える肩を抱いた。
あんなに怖い雄飛さんを、俺は知らない。
いつだってヘラヘラ笑う雄飛さんしか、俺は見たことがない。
知らない方が幸せなこともあるのだと、
見を持って経験した気がした。
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