愛して、愛されて。
第3章 日常と、
「んー、なんだよ」
ハッとして顔を向けると、
眉を真ん中にギュッと寄せた恭と目が合った。
「なんつー顔してんだよ…」
「いや、別に大したことじゃねーんだけどさ、」
途切れた言葉の続きを黙って待つ俺の耳に、強張った恭の声が響いた。
「アイツ、気をつけたほうがいーぜ」
耳元に顔を寄せて、そっと耳打ちされた。
首を傾げるながらも、恭の視線を辿る。
行き着いた先には、
「伊勢谷センセ?」
「…そ、」
そこには、珍しく学食で昼飯を食う先生がいた。
俺達の学年に数学を教えている伊勢谷先生。
彼は30前半の若い先生で、眼鏡をかけた中々のイケメン先生だ。
もちろん、生徒からも信頼を置かれていて、
俺もその中の一人。
なんでだよ。
疑問の目を恭に向けると、恭はチラリと伊勢谷センセに目を向けた。
「いや、俺の考え過ぎならいいんだけど…
この頃アイツ、すげーお前のこと見てんだ。」
「はぁっ!?」
馬鹿なことを言う恭に、俺は不信な目を向けた。
「んなことねーだろ。恭、心配しすぎじゃんか」
「…、それならいいけど」
納得しない恭を不思議に思いながらも、伊勢谷センセを見た。
上品にうどんを啜っていて、俺のことなんてまるで気付いてない様子。
やっぱり恭の考えすぎだろ。
過保護もここまでくると、可愛らしいな。
なんて、小さく笑った。
「…笑うなよ。
とにかく、気をつけろよ?」
「ぶっ、はいはい。」
過保護すぎる恭に、ついつい笑ってしまう。
そんな俺に、恭はもう一度深いため息をついた。