愛して、愛されて。
第1章 狂愛
逃げられないことを悟った俺は、決死の行動に出た。
このまま、兄さんの思い通りにはなりたくない。
今だ俺の頬を撫で続けている兄さんの手を、バッと払いのけ、
十分に距離をとるため、2歩後ろに下がる。
「触んな!だ、大体…
俺は今日は何もしてねぇじゃんっ、」
そうだ。
兄さんに責められる理由は、無いはず。
兄さんの気に入らないことなんて、した覚えはないんだから。
…反抗したって、いいんだ。
だけど、兄さんの言葉にハッとした。
「へぇ。口答えするんだ」
一歩一歩、ゆっくり近づいてくる兄さんに、
ビクリ、肩が揺れる。
「じゃあさ。携帯に、雄飛のアドレスがある訳を、説明してよ。」
「あ…」
俺の顔を覗く兄さんは、もうさっきみたいに笑ってない。
ただ、漆黒の瞳に、顔を青くしているであろう、俺が写っているだけだった。