愛して、愛されて。
第3章 日常と、
ここは、第2校舎3階の廊下。
音楽室、図書室、PC室しか教室はなく、生徒が立ち入ることは滅多になかった。
しかも、今は放課後だ。
図書委員会の委員長とやらを任されてしまった俺は、誰かが来るとか来ないとかに限らず、
図書室で仕事をしなきゃいけないから仕方ないとして…
伊勢谷先生は、何でいんだ?
不信に思う俺に気付いたのか、伊勢谷先生がニッコリと笑った。
「PC室で仕事をしにきたんだけど、村尾がいたとは知らなかったよ。」
そう言った伊勢谷先生の手には、確かに束になった書類が握られていて、
俺の警戒意識が、少し薄れた気がした。
なんだ、仕事か。
それなら納得がいく。
PC室で書類をまとめる先生は少なくない。
「そうなんすか。俺は、図書委の仕事があって…」
面倒臭いんです。
そう言って笑うと、伊勢谷先生は、俺にゆっくりと近づいた。
ポンっと頭に手を乗せられ、目を見開く。
驚く俺に、伊勢谷先生は転がすように言葉を発した。
「イイ子だね。君は本当に…イイ子だ。」
首を斜めに傾げ、俺の目を真っすぐに見つめる伊勢谷先生に、
さっきと同じ悪寒が、背中を走った。