愛して、愛されて。
第4章 酷く冷たい優しさ
―――綺麗だな。
本当に、綺麗な人だ。
息が止まるような気がして、肩にかかった鞄を落としそうになる。
「…卑怯だ」
こんなの、卑怯すぎんだよ。
犯されても、兄さんを責めることができないのは、きっとこのせいだ。
こんなに綺麗な顔で眠る人が、あんなことするわけないって、
きっと、目を覚ましたら兄さんはあんなことしなくなるって、
思ってしまう。
それはいつも、裏切られるけど。
だって、本当に綺麗なんだ。
思わず、魅入ってしまうほどに。
伏せられた睫毛は、信じられないくらいに長くて。
毛穴の一つもないような肌は、きめ細かく透き通っている。
兄さん以上に綺麗な男の人なんて、きっといなそうだ。
伊勢谷先生も、雄飛さんも、恭も、
みんなカッコイイけれど、
兄さん程じゃない。