
愛して、愛されて。
第4章 酷く冷たい優しさ
鞄をそっと下ろす。
兄さんが眠るソファーに、もう少しだけ近づいた。
カーテンが閉まり、電気もついていない。
そんな薄暗い部屋の中で、兄さんの寝顔は、はっきりと見ることができる。
無意識に、手を伸ばしていた。
兄さんの頬へと、真っすぐと伸びる手にハッとして、
触れる直前で、ピタリと止めた。
なにやってんだよ…俺。
「っ…、」
“兄さんに触れたい”
頭の中で、誰かが呟いた。
それは、俺の頭を混乱させるのには十分で。
…なんだよ、なんなんだよ。
やっぱり、俺はおかしい。
兄さんに触れたいなんて、
………そんなわけないのに。
