テキストサイズ

愛して、愛されて。

第4章 酷く冷たい優しさ





自分の行動に気が引いて、

伸ばした手を引っ込めようとした時だった。


―――グイッ。

「うわっ!!!」


強い力で手首を引かれ、体が宙にふわりと浮かぶ。

次の瞬間、俺は兄さんの香水の香りに包まれていた。

「…―っ、」


「俺の顔、そんなに面白い?」


クスクスと笑う兄さんの声に、ハッとした。


「ご、ごめ…、」


腕に力を入れ、起き上がろうとするけれど、

背中に腕を回され、逃げられないように、強く抱きしめられた。


「兄さん!?離せっ!」


「なんで?近づいてきたのは、奏太だ」


「…っ…、」


この言葉に、返せる言葉もない。


馬鹿かよ、俺は。


自分から近づいたんだ。

兄さんの意見は、ごもっともだった。



強く俺を抱き留める兄さんの腕に、逃げられないと堪忍した俺は、

そっと体の力を抜いた。


瞬間、俺の体に染みていく兄さんの体温。


不甲斐にも、その暖かさに安心する俺がいて、そっと唇を噛み締める。


情けない、嫌だ、認めたくない。


いろいろな感情が胸をグルグルと渦巻いていて、唇を噛む力を、無意識に強めていた。


瞬間、ふわりと感じた違和感に、体がビクリと跳ねた。


兄さんの細い指で、唇を撫でられている。

意識がそこに集中し、熱が集まっていくのを感じた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ