愛して、愛されて。
第4章 酷く冷たい優しさ
「…っ、ふっ…く…」
ダン、ダン…―
何度か叩いて、力を抜いた。
兄さんの体の上で、ガクリとうなだれる。
震えが止まらない。
怖いわけじゃない。
ただ、悲しくて。情けなくて。悔しくて。
兄さんの胸に頭をこじつけ、フルフルと首を振った。
「…そうだよ。」
今まで黙っていた兄さんが、口を開いた。
スルスルと、俺の背中を撫でるのは、昨日俺の腕を縛った兄さんの手。
恐怖が沸き上がる。
だけど、逃げる気にもなれなかった。
「俺のせいで、こんなに震えてる。」
顔を上げる勇気がない。
だから、兄さんの表情はわからない。
だけど、その声色は何処か切なさを含んでいた。
「…奏太、奏太、奏太。」
「兄さん…?」
ギュウウウッ、さっきとは比べものにならない強さで抱きしめられた。
まるで乗り移られた様に、俺の名前を呼びながら、俺を引き寄せる兄さん。
突然の兄さんの変化に、戸惑う俺。
顔を上げると、兄さんの瞳が真っすぐ俺を見つめていて。
逸らすことができない。
吸い込まれそうになりながらも、俺も兄さんを見つめた。
――――何秒、見つめ合っていただろうか。
兄さんの熱を帯びた瞳に、じわりじわりと飲み込まれそうになる。
だけど突然、兄さんは俺の背中から手を離し、解放した。