愛して、愛されて。
第6章 狂気の陰
「奏太。今日泊めてくれ」
「は?」
口にほうり込もうとしていた卵焼きを、ポロリと落としてしまった。
だって、いきなりだ。
いきなり過ぎる。
突然の恭の言葉に、頭の中では兄さんがゆらゆらと揺れていた。
「な、んで?」
いつも通りに恭に笑いかけ、微かに震える声で聞いくと、恭はすっと目を伏せた。
「今日さ、アイツ帰ってくんだよ。」
「アイツって…恭の母ちゃん?」
「ん、そう。」
困ったように眉を細めて笑った恭に、きゅっと胸が痛む。
恭の心の闇を、改めて感じた。
恭の母ちゃんは、いわばお水の仕事らしい。
小さい頃から家に男を連れ込み、自分をのけ者にする母親を、恭は酷く憎んでる。
ここんとこずっと家には帰ってきてないらしかったのに。
………なるほどなー。
恭の言葉の意味を、すべて理解した。