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愛して、愛されて。

第6章 狂気の陰




「ダメだったら別にいーんだけどさ。」


そう笑った恭は、そのまま俺から目を逸らした。


平気な振りして笑う恭。
端から見たら、全然平気そうに見えない。


恭が困ってるなら、助けてやりてーけど…

だけど、兄さん。

兄さんが、許してくれるだろうか。


それに、もしも恭がいる時に、兄さんに犯されでもしたら…―


ブル…
背筋に寒気が走る。


そうなったらきっと、恭は俺の側にいてくれなくなる。

家にも学校にも、気の休む場所がなくなってしまう。

それは、嫌だ。
絶対、嫌だよ。

だけど、恭が困ってんだよな。


ちらりと恭を見ると、腕時計をチラチラと気にしながら、落ち着きなく足を揺らしていた。


もうそろそろ、恭の母ちゃんが帰ってくるんだろう。

その表情は、不安と焦りでいっぱいだ。




「…いーよ、泊まりにくれば?」


「え?」


「泊まれよ、今日。」



恭が困ってる時に助けてやらなかったら、親友失格だしな!

そう言って笑うと、恭は嬉しそうに俺に抱き着いた。

「な、なにし…」

「奏太、奏太、ありがとうなっ!俺、お前のこと好きだ、大好きだ。」

「…っ…―」


なに恥ずかしいこと言ってんだよ。

…照れる。


顔に集まる熱を抑えるのが大変だ。



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