愛して、愛されて。
第6章 狂気の陰
「は、離れろ!馬鹿恭」
そう言って、恭の腕から逃れようとする俺を、
恭はもっと強く抱きしめた。
かーっ…
体に熱が集まる。
だけど、微かに震える恭の腕に気づいて、
抵抗を辞めた。
「今日、家に帰んなくていいかんな!」
「え…?」
「真っ直ぐ俺の家来いよ。着替えとかなら…まぁなんとかなるだろ!な?」
「…っ…―奏太、まじでありがとな。」
俺をそっと離した恭は、俺の頭をぐるぐると撫で回した。
「ばっ!やめろー!!」
ぐしゃぐしゃになっていく髪。
だけど、恭の心から楽しんでいる様子を見て
俺も笑った。
そうだ。
兄さんがどうとか、嫌われたくないとか、
そんなの関係ない。
恭が笑ってられんなら、なんだっていい。