テキストサイズ

愛して、愛されて。

第6章 狂気の陰

やっぱり、まずいよな。
こんなしょっぱい味噌汁なんて。


ちらりと恭を見ると、平然と味噌汁をすすっていて。

逆に申し訳ない気持ちにかられた。

「いいよ、恭。まずいだろ?
捨てるから、寄こせ。」

手を伸ばし、恭に寄こせと急かした。

そんな俺を、キョトンととした顔をして見つめた恭。

そして、ニッと笑った。


「やだよ、せっかくお前が作ったのに。
無理してでも食ってやる。」

「はぁ?」

なんだそりゃ。

俺が怪訝な顔をすると、恭はなにもなかったように、ガツガツと味噌汁をすすり始めて。

終いには、おかわりー。
なんて、2はい目をよそってきやがった。


その食いっぷりに驚いてしまう。

こんなショッパいもん、よく食える。

顔を歪めた俺に、恭は笑った。


「お前が作ったもんは、なんでも食いてーんだよ。」


恥ずかしそうな顔をして、そう言った恭。



嬉しくて。
なんだか、照れくさい。


こんな夜は、久しぶりだ。

母さんは、今日は夜勤で家には帰らないし、

••••兄さんは、いないし。


こんなにも安心して夕ご飯を食べるのは、本当に久しぶりだ。


いつからか、兄さんの前で堂々とすることができなくなった。

兄さんの前だと、体が強張ってしまう。

だけど今日目の前にいるのは、兄さんじゃなくて、恭だ。

よかった。

恭を助けるつもりが、逆に助けられてしまったのかもしれない。











ストーリーメニュー

TOPTOPへ