
愛して、愛されて。
第7章 眩暈がするほどに
痛い。背中が壁に打ちつけられて。
それよりも。
それよりも兄さんの鋭い瞳が、痛い。
「に、いさん?」
何も言わず、兄さんは逃げられないように俺の顔のすぐ横の壁に両手をついた。
後ろには壁、前には兄さん。
そして横には、兄さんの腕。
俺の逃げ道は、ない。
俺の心臓は、痛いくらいに跳ね上がっていた。
兄さんの機嫌が悪い。
たぶん、俺が関係してる。
俺はまた、兄さんが気に食わないことをしたのだろう。
また、いつもの•••だろうか。
俺は、犯されるのだろうか。
そんな恐怖を感じながら、俺を壁へと押さえつける兄さんを見つめた。
暗い廊下。静かで、不気味な家の中。
今日は、ダメだ。
ダメなんだよ、兄さん。
恭がいるんだ、失いたくないんだ。
