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愛して、愛されて。

第7章 眩暈がするほどに


「謝るからっ、謝るから•••
俺がなにかしたなら、ちゃんと、謝るから。

嫌だ、嫌だよ兄さん!今日は、許して•••お願いだから。

恭が•••大切な友達が、泊まりにきてんだ。
だから、許して•••兄さん、」

震える声で、やっと言葉を発した。

俺の精一杯。
怖い、兄さんに抵抗するのは、怖い。

それでもどうしても、今日は止めてほしいんだ。

俯いて、唇を噛み締めた。
じゃないと、泣きそうで。
カッコ悪いけど、恐怖で泣いてしまいそうで。


「嫌だ。嫌•••だ。兄さん•••」

そんな俺の言葉に、兄さんの肩が少しだけ震えた気がした。





だけど、やっぱり。
それは気のせいだった。


「じゃあ、なんで?」

兄さんが発した言葉に、俺の体がビクッと反応した。


いつも以上に低い声。
明らかに、怒っているのだと分かる。

「な、にが?」

聞き返す俺の声も、恐怖で震えていた。

そんな俺を構うこともなく、兄さんはゆっくりと俺に顔を近づける。

その瞳は、鋭く俺を睨んだまま。

ついに、鼻先が触れてしまうくらいに、兄さんの顔が近くなってしまった。


「なんで、俺の言うことを聞かない?」

薄く開いた唇から出た言葉。

兄さんの、本心だろうか。
その証拠に、俺を睨む瞳が微かに切なく
緩んだ。








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