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血とキズナ

第4章 どうでもいい奴ら

「邪魔って、ふつう止めるでしょ? あんな状況」

「お前には関係ないだろ」

「あるよ。放置なんて、後味悪いじゃんか」


 膝から手を離し、リツは上体を戻す。


「余計なことだ。
 俺のケンカを、お前が止める権利なんてねえんだよ」

「そんなにケンカ好きなの? そんなケガまでしてさ」

「これはお前のせいだろ」

「はぐ」


 頭殴ることはなかったよな、と反省はしているが、とっさだったから仕方がない。


「いや、でも、こんな無茶なケンカしなくてもさ。もうちょっとこう、良心的な感じのケンカしなよ」

 はっ、と鼻で笑う鴇津。

「ケンカに良と悪があんのかよ」

 鴇津に一蹴され、リツは言葉を詰まらせた。

 鴇津の言い分はごもっとも。
 当の本人にツッコまれるとは、情けないというかなんというか。


「でも、なんであんな負け戦みたいなケンカに突っ込んで行くんだよ。理解できん」

「できなくて結構」


 理解できない。
 ふつうの感覚を持つ人だったら、あんなところに笑顔で飛び込んでいくことはしないし、絶対できない。

 負けるどころか、殺されるかもしれなかった。

 しかしリツは見た。

 学ランに囲まれたときの、息を吹き返したような、鴇津の表情。

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