テキストサイズ

血とキズナ

第4章 どうでもいい奴ら

 ボロボロにやられるのが目に見えている状況で、楽しそうに自らそこに身を投じる精神が、理解できなかった。

 しかし、それと同時にリツは、鴇津の気持ちがすべてわかっているような、妙な感覚を持った。

 心の奥底では、鴇津の行動の意図に気づいている。

 鴇津は、誰かに似ている。

 そして共感する。

 放っておけない。近くにいたい。
 一緒にいてやりたい。

 そんな、鴇津からすれば、うっとうしいだけの感情が湧いてくる。

 ひと仕事終わったあとの一服と言わんばかりに、煙草に火をつけだす鴇津に、リツは聞いた。


「あいつらに、因縁があるわけじゃないだろ」

「ああ」

「どうでもいい奴らなんだろ」

「そうだな」

「そんな奴らとやり合って、あんたがケガするだけの価値があるのか?」

「ア?」


 鴇津の眉間にシワがよる。


「どうでもいい奴らのために、なんでケガするまでケンカするんだ」


 鴇津が、つけたばかりの煙草を床に捨て、踏みつぶす。


「なにが言いてえんだ」


 真意の読めないリツの問いに、鴇津がイラつきだす。


「いや。わかんないことを聞いてるだけなんだけど」


 リツは鴇津の瞳をじっと見つめた。
 その奥のほうに、なにかがある気がした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ