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血とキズナ

第5章 路地裏の青天

 鴇津がバイトのリストを持ってきてくれたとき、少しは距離が縮まったかと思ったが、むしろ避けられているようだ。
 物理的ではなく、精神的に。

 何かいやなことでもしただろうか。

 ――まあ、思いきり怒らせてはしまったが。
 それだって、なぜあそこまで怒ったかがわからない。

 鴇津のおかげで無事バイトも決まり、今日からそこで働くというのに、お礼も報告もする隙がない。

 リツは、鴇津との距離を計りかねていた。

 気分を落としながら正門をくぐると、見たことのある顔が2つ、まるでリツたちを待っていたかのように、校庭の真ん中で仁王立ちしていた。


「お、きたきた」


 坊主頭の男が言った。
 その声に、坊主頭の隣に佇む巨人も、リツのほうを向く。


「へえ、ホントに鴇津が護衛してんのかよ。
 どんな風の吹き回しだ」


 近づいてくる厳つい男二人に、佐山が「げっ」とひるむ。


「紫鳳特攻隊の松根と土井だ」

「へえ、そういう名前なんだ」


 “時雨”での一件のとき、部屋まで迎えにきてくれた親切な彼らだ。

 ちなみに、時雨でケンカしたときにリツが一番最初に沈めたのが、この土井という大男だ。

 向こうもそれを覚えているのか、さっきからすごい形相で睨みつけてくる。

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