血とキズナ
第5章 路地裏の青天
「――なんか用か」
相変わらず、校庭のど真ん中でも煙草片手の鴇津。
その顔に表情はない。
「なんでお前が、コイツの護衛してんのかなと思ってさ。様子見にきただけよ」
坊主頭の松根は、見た目に反して、そこそこ愛想がいい。
あの日迎えに来たときも、不良らしからぬ紳士具合だった。
世間話でもするような声色で話しかける松根だったが、それを鴇津が一蹴する。
「消えろ。ハゲ」
「ア? んだとコラ」
そんな態度に、松根もキレた。
かなり簡単にキレた。
松根もれっきとした不良らしい。
「ちょっとっ、内輪もめは御法度っスよ」
額を突き合わせる二人の間に、ここ毎日いっしょに行動するようになったユウゴが介入するが、メンチの切り合いは収まらない。
しかしリツはというと、少しほっとしていた。
ちゃんと、内輪の人間には言いたいことを言っている。
それでこそ鴇津らしいと安心し、リツはひとり昇降口に向かった。
「お、おいリツ」
佐山は驚きながらもリツの後を追う。
「いいのかよ、放置して」
靴をはきかえながら、佐山は言った。