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血とキズナ

第5章 路地裏の青天

 不意に聞こえた鴇津の声に、佐山は瞬時に緊張する。

 鴇津のまえでは異様に小さくなる佐山を笑いながら、リツは教室へ向かった。




   ◆ ◆




「悪いがリツ、俺はいっしょに行けないからな」


 帰り支度をしていると、隣の佐山がおびえた子犬のような目で訴えてきた。


「行くもなにも、おまえはあの人たちと約束してないだろ」

「そうだけど。
 心配じゃんかよ。おまえすぐトラブル起こすし」

「人をトラブルメーカーみたいに」

「まさにそうだろうが」


 リツは、心外だと口をへの字に結んだ。


「ただ話すだけだよ。島田もいるし」

「ユウゴなあ。
 あいつは完全に鴇津さんビイキだからな。あんま信用してもよくねえよ」


 リツは軽く鼻から息を吐いた。


「大丈夫だって。島田はいい奴だよ」

「今朝嫌われてるって言ってなかったか」

「それはそれ。これはこれだよ」

「どっちもいっしょだろうが」


 佐山と言い合いをしていると、いつものように鴇津がやってきた。


「帰んぞ」


 鴇津の言葉に佐山の目は点になるが、すぐに何かを察したようにはっとする。


「あ、俺、今日松根先輩たちに誘われてるんですけど」


 「ア?」と鴇津の眉間にシワが寄る。

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