テキストサイズ

血とキズナ

第5章 路地裏の青天

 リツも、その答えがでなくて今に至る。

 だから、松根の考えを期待し、何も言わずに待った。


 最初の鴇津はリツのことなど興味なさげで、時雨の一件から一週間は会いもしなかった。

 呼び出しを受け、九鬼というこれまたよくわからない男と出会い、それからの鴇津はぴったりと側にいるようになった。

 しかし特に楽しそうと言うわけでもなく、ただつまらなそうでもなく、話しかければふつうに話してくれた。
 佐山はいまだにビビっているが、リツからすればふつうの友達感覚だった。

 だがここ数日、鴇津の機嫌がすこぶる悪い。

 話しかければ眉間にしわが寄るし、話しかけるなオーラが一層強くなった。

 ユウゴでさえ、最近の鴇津には話しかけない。

 日に日に変わる鴇津の態度。

 付き合いの浅いリツにとって、いつの時がふつうの鴇津で、どれが不機嫌で、どれが機嫌のいい鴇津なのか、基準がわからなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ