テキストサイズ

血とキズナ

第5章 路地裏の青天

「俺たちのいた施設って、最悪だったんすよ。
 教員はふつうに殴る蹴るの暴力三昧で、先輩から後輩にもそのつけが回ってきてさ。

 俺は中1から施設に入ったから、一番下でしかも新入りだろ、上からのウサ晴らし一身に受けてよ。
 園内の事件は全部オレのせい、悪事は全部オレのせい、って感じで。

 でもトキツさんは、そん時からあんな感じで、先輩や教員とはやり合ってたけど、下の奴には一切手ぇ出さなかったんす」


 ユウゴは口に運ぶでもないパスタを、フォークでくるくる巻いている。


「そんなときに盗みが起きたんす、しかも教員の財布。
 案の定オレのせいになって、あんときゃメタメタにやられました。あばら折れたし。

 そん時っす。トキツさんが、助けてくれました」


 ユウゴの動いていた手がぴたりと止まり、似合わない無表情で、続けた。


「包丁でオヤジの背中刺しちゃって、だいぶ大事になったんすけど、オヤジも命に別状はなかったし、理由が理由だったから、トキツさんは保護観察処分だけですみました。

 しかもその事件がきっかけで園内の不祥事もおおぴらになって、園は閉園。
 そこの奴らはみんな、他の園に移ることになったんす」


 リツはグラスを片手に、ユウゴの話を黙って聞いていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ