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血とキズナ

第5章 路地裏の青天

 誰かが口を開くより早く、リツは席を離れた。

 残された3人の中で、ほんの少しの沈黙が流れる。


「アイツも、意外とそういうとこあるんだな。
 いっつもへらへらしてっから――」


 松根のつぶやきで、会話が再開する。


「ウソだろ。見栄張ったんスよ、どうせ」

「でもアイツ、ケンカは強い……」

 土井がボソリと言う。

「え、そうなんすか?」

「あれ、お前知らなかったっけ。
 アイツ、一人で時雨にきて、俺らの7、8人伸したんだぜ」

「……マジっすか」


 ふだんのへらへらした姿しか見たことのないユウゴには、衝撃的だった。


「でも、なんとなく、鴇津がアイツにご執心のわけがわかったな」

「え、なんすか」

「俺ら紫鳳のメンバーは大多数がアイツにビビってるし、他校の奴は敵視してるかひれ伏してる。
 お前は尊敬しまくってるけど、でもアイツは、どれでもないからな」

「――オレより、アイツのほうがいいってことッスか」


 ぐっと、何かを耐えるようなユウゴの顔を見て、松根は笑いながらユウゴの肩を叩いた。


「そうじゃねえよ。誰だって、不思議な奴には興味持つだろ。
 鴇津もそんな感じなんじゃねえの? 現に俺も――」

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