テキストサイズ

血とキズナ

第5章 路地裏の青天

 さっきまで立つ力も残っていなかったというのに、急に足に力が入った。


「なにさ! ケンカするのは勝手だけどな、人にメシ代押しつけといて偉そうにすんな!」


 リツのズレた迫力にほんの少し圧された。


「九鬼先輩がいなかったら、俺あそこから出らんなかったんだからな。
 しかもケンカも劣勢みたいだし。
 あんたたちが帰って来れなかったら俺はどうしたらよかったわけ?
 勝っとけよそこは、弱っちいなッ」


 返す言葉もなかった。
 リツの言葉のどこからツッコむべきか。
 それを考えているうちに、どうも笑えてきた。

 こいつは変なやつだ。
 空気も読まず、正しいようなことをいう。

 完全に毒気が抜かれてしまった。


「ああ、うん。悪かったな。俺らが悪いな、これは」


 鴇津がこいつを気にかける理由が、何となくわかったような気がした。


「おいコイツ、カギのヤツじゃね?」

「カギって――あ、紫鳳の」

「マジ?」


 「ん?」とリツが振り返る。

 奴らの視線が、リツへ注がれる。
 標的がリツへと移ったようだ。


「ヤっちまえ!」


 彼らがリツ目掛けて攻めてくる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ