血とキズナ
第5章 路地裏の青天
「なにボケっとしてんだっ。逃げんぞ」
松根はリツの襟首を掴み、逃げ出した。
そんな自分の行動に驚く。
ケンカから逃げるなんて初めてのことだ。
でもリツを見ていたら、逃げるという行為が自然なことになっていた。
ユウゴと土井も、何の文句も言わずついてきている。
「ねえ、なんであの人たち俺がカギ持ってるって知ってんの」
がくっと、足がもつれた。
「あのなあ。
紫鳳っつうのはお前が思ってるより遙かーに有名なグループなの。
そこのビックニュースなんざ、あっつう間に広がんだよ」
「へぇ、そんなにビックなことなんだ」
リツは走りながら、「ふ~ん」と脳天気にそんなことを言う。
ああ。
これは守ってやらねぇと、コイツも紫鳳も崩壊だな。
鴇津がコイツを護衛する理由が、なんとなくわかった――気がする。