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血とキズナ

第5章 路地裏の青天

 



   ◆ ◆



 顔面に膝を叩き込み、多分鼻が折れたであろう男を、鴇津は解放した。

 べしょっと堕ちた死体は、この男で10体ほど。


 鴇津がぷらぷらと路地裏を歩いると、彼らが急に因縁をつけてきた。

 学校の制服は着ておらず、どこかのグループかチンピラか。
 知らない連中だったが、ちょうど虫の居所の悪かった鴇津は、その虫の思うがままに拳を振るった。

 自分の澱んだエネルギーを思いきり相手に発散して、全部すっからかんになれば、その一瞬だけでも、目の前がスカッとする。

 次の日になればまた澱みが復活するが、この一瞬は、凄く気分がいい。

 だが今日は、どうも様子が違った。

 路地裏から覗く狭い空がくすんでいる。

 エネルギーを発散しても変わらない。
 むしろ酷くなったような気さえする。

 澱みが消えない。


 (――アンタガ)


 消えるどころかそれは、色を変えて鴇津の内でくすぶっていた。

 壁を何度殴ってみても、それは変わらない。


 (――ケガスルダケノ)


 拳の痛みが、さらに苛立ちを増幅させるだけだった。

 言いようのない蟠りが、ぐるぐるしている。


「クソッ――!」


 今にも発狂しそうだった。



 (――カチガアルノカ?)



 

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