血とキズナ
第5章 路地裏の青天
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顔面に膝を叩き込み、多分鼻が折れたであろう男を、鴇津は解放した。
べしょっと堕ちた死体は、この男で10体ほど。
鴇津がぷらぷらと路地裏を歩いると、彼らが急に因縁をつけてきた。
学校の制服は着ておらず、どこかのグループかチンピラか。
知らない連中だったが、ちょうど虫の居所の悪かった鴇津は、その虫の思うがままに拳を振るった。
自分の澱んだエネルギーを思いきり相手に発散して、全部すっからかんになれば、その一瞬だけでも、目の前がスカッとする。
次の日になればまた澱みが復活するが、この一瞬は、凄く気分がいい。
だが今日は、どうも様子が違った。
路地裏から覗く狭い空がくすんでいる。
エネルギーを発散しても変わらない。
むしろ酷くなったような気さえする。
澱みが消えない。
(――アンタガ)
消えるどころかそれは、色を変えて鴇津の内でくすぶっていた。
壁を何度殴ってみても、それは変わらない。
(――ケガスルダケノ)
拳の痛みが、さらに苛立ちを増幅させるだけだった。
言いようのない蟠りが、ぐるぐるしている。
「クソッ――!」
今にも発狂しそうだった。
(――カチガアルノカ?)