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血とキズナ

第5章 路地裏の青天

 言葉が、浮かんでは消え、また浮かんでくる。


 価値?

 そんなもん、考えたこともない。

 ケンカに価値もなにもない。

 怪我の価値ってなんだ。

 俺が怪我することに、意味なんてない。
 ケンカという行為についてくる、ただのオマケだ。


 価値なんてない。

 意味もない。


 コイツらにも

 学校にも

 族にもヤクザにも世間にも

 俺にも

 価値はない。


 俺にとって価値のあるものなんて、どこにも――何もない。


 あいつは、どういうつもりで聞いたのか。

 意味のあるケンカをするヤツが、この世にいるとでも思っているのか。

 力でしか、ものを解決できない人間なんて、ただのクズだ。

 この世はクズの集まり。

 クズしかいないこんな世界に、価値なんてあるわけないだろ。


「おお、これはまた派手にやったなトキ」


 わき道から、東条が現れた。

 威風堂々。

 彼にはそんな言葉がよく似合う。
 ただそこに立っているだけで、その場の空気が変わる。
 彼はそういう男だ。


「うわぁ、相変わらずむちゃくちゃするね」


 そんな東条の後ろににくっついているのが、女みたいな顔と華奢な体躯の三上という男だった。

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