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血とキズナ

第5章 路地裏の青天

 そのムカつく背中が見えなくなると、鴇津は腰を落とし紫煙を深く吐き出した。


 すべてを見透かしたようなあの瞳。

 視線がぶれず、ただまっすぐと注がれるあの目に睨まれると、かき乱される。

 そんな不思議な目を持つ人間に、会ったことはなかった。
 だからこそ、鴇津は誘われるがままに東条のグループへ入った。

 族に興味があったわけではなかった。
 単純に東条という男に、関心を持っただけだった。


 だが、アイツ――。

 綾野リツも、東条と似た目をしていた。


 奥のほうを見つめるような黒い目。

 すべてを見透かされるんじゃないかと思うほどの、深い目。

 アイツに見られると、急に恐ろしくなる。

 もしかして、自分も知らない自分を、見られてしまうんじゃないか。知られてしまうんじゃないか。

 ――見たくない自分を、見せられてしまうんじゃないか――。

 そんな恐怖は、東条からは感じない。

 すべてを知ってるぞ――と語る瞳で、思わせぶりな態度を見せる東条に、苛立ちやムカつきは感じるが、怖いと思ったことは一度もなかった。

 それなのにリツの目には、はっきりと恐怖を感じた。

 そんな自分にも腹が立つ。

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