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血とキズナ

第5章 路地裏の青天

 あんなへらへらしたガキが怖いなんて、
 あんなヤツが俺に恐怖を覚えさせるなんて、
 あんなヤツに心をかき乱されるなんて、

 あんなヤツのせいで、ケンカに爽快感がなくなってしまったなんて、

 あんなヤツのことで、頭がいっぱいなんて――。


 ――あんたが怪我するだけの価値があるの?――


 あのまっすぐな目が、ムカついて怖かったのと同時に、なにか、他の感覚にも捕らわれた。

 それが気になって離れない。
 嫌だったら会わなければいいんだ。

 東条みたいに、適当な距離で眺めていればいい。

 だがリツとは、その距離がうまく図れない。

 護衛なんて、自分でもらしくないことぐらいわかっている。
 だがそうしたいと思ってしまったのは事実。

 九鬼に捕まって、嫌な目に遭ってほしくないとも思いはしたが、それはある意味口実で、本当のところは、リツの近くにいたかったからだ。

 そんなふうに思ってしまっている自分を、鴇津は許せなかった。

 人の近くにいたいなんて、そんな甘えた人間にはなりたくなかった。

 そんな人間が、一番嫌いだったはずだ。

 友達、仲間、恋人。

 そんなもの、嫌悪感しか感じなかったはずなのに――。


 ひとりで生きていきたかった。

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