テキストサイズ

血とキズナ

第6章 昔の俺と、今の君

 駐車場を突っ切っていると、ライトがひとつ、上下に揺れながら駐車場に入ってきた。

 この国道は、ライダーもよく走っている。

 これだけでかい通りをすっ飛ばすのは、さぞ気持ちいいことだろう。

 バイクは、リツの側でスピードを緩め、ゆっくりと止まった。

 お客さんだろうと気にも止めなかったリツだが、ライトの向こうから飛んできた声にはっとする。


「リツ」


 エンジン音でにかき消されながらも聞き覚えのある声。
 ヘルメットを小脇に抱える姿が様になっている。


「え、鴇津さん。何でこんなとこにいんの?」


 ヘルメットと逆光で、全くわからなかった。
 というか、まさかこんな所にいるとは思わなかった。


「バイトあるならあるって言っとけよ」


 鴇津の言葉に、リツは畏まった。


「すいません。
 あの、せっかくバイト先紹介してもらったのに、何の報告もしなくて」

「そうじゃねえよ。
 あれだけ1人になるなつっただろ。
 しかもこんなところ、拉致られたって誰も気づけねぇぞ」

「拉致って、そんなオーバーな」


 ははーと、リツはいつもの能天気面で笑い飛ばした。

 相変わらずのボケっぷりに、鴇津も少しずつ慣れてきた。
 コイツには何を言っても通じない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ