血とキズナ
第6章 昔の俺と、今の君
「あの、バイトありがとうごさいました」
「ああ」
鴇津は顔も向けず、淡々とバイクを押しながら言った。
「あの、なんでこんなところまでわざわざ?」
「別に」
相変わらず会話が少ない。
鴇津は基本的に返答が3文字以内だ。
これは暗に、会話を拒否られているのだろうか。
でもさっきは、ちょっとふつうにしゃべれた。
もしかして、バイクに乗るのを断ったから機嫌を損ねたのだろうか。
乗っていたら、少しは話せたのかもしれない。
――いや、そんなこともないか。
そもそもエンジンと風の音で、会話どころじゃないような気がする。
会話もなく、並木をはさんで歩いていると、後方から一際うるさいエンジン音が響いてきた。
それはひとつではなく、光も強くなって徐々にリツたちに近づいてきた。
どこかのライダーが大勢でツーリングでもしているのだろうと、特に気にしていなかったが、その大量の光たちがリツたちの周りに集まりだした。
眩しくて何も見えず、リツは手をかざして何事かと様子を窺った。
集まったバイクは、総勢十数台。
どのバイクも派手な格好をしていて、どうやら族車のようだ。