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血とキズナ

第6章 昔の俺と、今の君

 
「よう、昼間は仲間が世話になったな」


 エンジンの轟音の中でも響くしわがれた声。
 見れば誰ひとりヘルメットをしておらず、変わりにバットや鉄パイプなど、えらく物騒なものを持っていた。

 リツに心当たりはない。

 ――あ、いや、そういえば昼間ひと悶着あったけど。
 でもあれは高校生だったし。

 今目の前にいる男たちは、どう見ても高校生じゃないから多分違う。

 だったらやっぱり……と、鴇津の顔色を覗いてみると、無表情で彼らに睨みを利かしている。
 ――心当たりがあるっぽい。


「てめぇ紫鳳のトキツって奴だな。最近チョーシ乗ってるみてぇじゃねえの。
 あんまおイタがすぎると早死にするってこと教えてやるぜ」


 と周りの男たちが、高らかに笑い出す。

 リツは内心焦っていた。

 こんな状況で、この人数を相手なんてヤバいにもほどがある。

 もし鴇津のスイッチが入ってしまったら、国道が血に沈む。


「鴇津さん――」


 恐る恐る鴇津を呼んでみると、意外もあっさりリツのほうを振り向いた。

 その顔は、いつものケンカを前にした鴇津の顔ではなく、異常に朗らかだった。

 むしろリツの顔のほうが強ばっていて、鴇津がふっと笑った。

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