血とキズナ
第6章 昔の俺と、今の君
「なんて顔してんだ」
独り言のようにつぶいて、鴇津はガチンとバイクスタンドを立てた。
バイクから離れ、ヘルメット片手にリツの前へやってくると、そっと一言いった。
「悪いな」
「え?」と聞き返す間もなく、リツはヘルメットを被せられた。
力強く腕を引かれ、抵抗する間もなく黒い単車に乗せられる。
鴇津の足が弧を描きながら、彼もシートに座る。ずんとバイクが沈んだ。
雄々しい背中がリツの視界を占め、白い羽のついたカギが回されると、バイクが息を吹き返した。
ドルドルと震えだす。
鴇津がハンドルに握り替えした瞬間、鉄の塊が一際大きく鳴き、その巨大を動かした。
しかしバイクは道路ではなく、歩道に乗り上げた。
それは想像より勢いがあり、リツの体は後ろに仰け反る。
とっさに鴇津の腰に抱きつき、なんとか姿勢を保った。
道路も広けりゃ歩道も広い。
鴇津は歩道を数メートル走り、族車たちを追い越すと車道に戻った。
あとはアクセル全開。
まっすぐに延びる道を、一気にかっ飛んでいく。
「ちょっとッ。走るなら走るって言ってよ! 落ちるかと思った!」
この短い時間で、数回落ちかけた。
マジで冗談でなく。死ぬかと思った。
「悪い。でも言ったら逃げらんなかったから」
エンジン音と風圧で会話は難儀な状態だが、お互い必死に声を張る。