血とキズナ
第6章 昔の俺と、今の君
「俺右手使えないんだからな」
「そうだったな」
「つかッ、ヘルメット!」
見れば鴇津はノーヘル。
後ろを向けば、案の定追っ手はきていて、鴇津もぐんぐんスピードを上げている。
この状態で転けたらと想像しただけでぞっとした。
「転けたら死ぬぞこれ」
「ヘルメット1つしかねんだよ」
「なんでだよ! バカだろ実は!」
「問題ない。このスピードならどっちにしろ死ぬ」
ちらっとメーターを確認すると150キロを差していて、さらに針は進んでいく。
「勘弁してッ。俺まだ死にたくねえ!」
「転けなけりゃいいんだろ。
お前はただしがみついてりゃいい」
「ラジャア!」
遠慮なく、リツはがっちりと鴇津に抱きついた。
想定外だった。
久しぶりに乗ったバイクは、経験したことのない迫力と緊張感で昔を懐かしむ余裕なんてまったくなく、それはただの、新しい乗り物だった。