血とキズナ
第6章 昔の俺と、今の君
おそらく、彼らは巻けたのだろう。
振り落とされないようしがみつくことで精一杯で、リツは事の成り行きなど見ている余裕はなかった。
気づけばバイクのスピードは落ちていて、どこかの駐車場に止まった。
鴇津に「なんか飲むか」と聞かれて、リツはとりあえず「暖かいの」と答えた。
鴇津は自販機のほうへ歩いていく。
リツはバイクから降りてベンチに座った。
もう腕一本動かすことすら億劫で、このまま永久に座っていたい。
「ほら」
目の前に差し出されたのはホットココアだった。
「すいません。ありがとうございます」
リツはなんとか腕を動かし、ココアを受けとる。
こんなに重い缶を受け取ったのは初めてだった。
ココアを受け取ると、鴇津はリツの隣に腰を下ろした。
パキッとプルタブを開く音が聞こえた。
鴇津は缶コーヒーをぐびぐびと流し込んでいる。
リツは蓋を開ける気力すら湧かなくて、缶の暖かさだけを受け取っていた。
自販機だけが光る駐車場。
辺りを見ればそこは森で、まったく見知らぬ土地だった。
ここはどこで、何時間走っていたのかもわからない。
わかるのは、自分が相当疲れていることと、鴇津からもらったココアが暖かいということ。