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血とキズナ

第6章 昔の俺と、今の君

 神経と寿命がすり減ったけれど、嫌な感覚ではなかった。

 むしろ、少し楽しかった。

 目の前に止まった暗闇色のバイクを見る。

 自販機の光が反射して、艶々と輝いていた。


「悪かったな」


 突然、鴇津が謝ってきた。
 リツは「ん?」と首を傾げる。


「バイク、乗りたくなかったんだろ」

「ああ――」


 そういうことか、とリツは納得する。


「案外大丈夫だった。つうか、思い出す余裕もなかったし」

「思い出す?」


 鴇津が、疑問をぶつけてきた。
 それだけのことだけど、相手が鴇津だとうれしくなる。

 人に興味を持っているということがわかって、少し安心する。


「よくね、明日斗と乗ってたんだ。あいつもバイク好きだったから。
 今日みたいに夜の街走ったり、よくしたよ。
 お互いあんまり家に帰りたくなかったしさ。明日斗は施設だけど」


 中学生が原付でニケツしてれば、それはよく警察にもお世話になった。

 それでも毎夜バイクで繰り出して、時には今みたいに人気のないところでだべったり、逆に中林らと大騒ぎしたり。
 夏には海に行ったり花火をしたりもした。

 山道でエンストしたときは死ぬかと思ったけど、今となれば笑い話だ。

 明日斗といて、退屈した瞬間は一度もなかったな、と自然と笑みがこぼれる。


「――楽しかったな」


 懐古が止まらなかった。

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