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血とキズナ

第1章 約束のカギ

 胸が熱い。

 明日斗はコイツを、本当に信頼してたんだ。

 コイツだって、明日斗に惹かれて近づいてきた奴らを取りまとめて、必要以上に明日斗に近づかせないようにしてた。

 明日斗が、そういうのが嫌いだってことを知ってたからだ。

 なのに、なんで――…。


 リツは、掴まれた腕を掴み返した。

 中林の顔が一瞬歪む。


「お前、これ以上明日斗のことコケにしたら、殺すぞ」

「は、ははっ、誰が誰を殺すって? 調子にノってんじゃねえぞリツ。
 明日斗くんの後ろに都合のいいときだけくっついてた付属品が。

 それからテメエなぁ、俺にタメ口きいてんじゃねぇよ。
 もう明日斗くんはいねえんだ、いつまでも対等だと思ってんじゃねえぞ」

「明日斗はお前を兄弟だと思ってたよ、本気で。
 残念だな。明日斗、きっと悲しんでる」


 言うやいなや、左頬に痛みが痛みが走った。
 口の中に鉄の味がにじむ。


「リツ!」


 後ろから佐山の声が聞こえた。

 人に殴られるの久しぶりだった。
 眩暈がして倒れそうになったが、胸ぐらを掴まれていたおかげで倒れずにすんだ。


「知った口叩くな。いい子ちゃんのテメエに何がわかる。
 ナメた口きくんじゃねえよ」


 胸ぐらを乱暴に離された。

 尻餅をつくと、佐山に肩を抱かれた。


「いいか、それは、テメエみたいなやつが持ってていい代物じゃねえんだ。
 今に柴鳳がテメエを狙って来る。
 そこで、カギ取られてテメエは終わりだ。
 せいぜい死なねえように気をつけることだな」


 中林たちは来た道を帰っていった。

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