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血とキズナ

第1章 約束のカギ

 
「大丈夫かリツ」

「ああ」


 立ち上がり、リツは尻をはたく。
 埃や紙屑が廊下に落ちる。


「天ヶ瀬明日斗」


 佐山がつぶやく。

 アマガセアスト――。

 明日斗のフルネームだ。
 こいつは、本当によく知っている。

 佐山も立ち上がり、再び廊下を歩き出す。


「やっぱすげえな」

「明日斗が?」

「いや、どっちも」


 どっちもって、明日斗と誰だ。

 リツは疑問符を浮かべながら、佐山と目を合わす。


「東条清春。
 目を付けるとこもふつうの奴とちょっと違うなって話。

 まさか天ヶ瀬明日斗とはな、意外っつうかさすがっつうか」

「お前、明日斗のことも知ってんのか」

「バカ、天ヶ瀬明日斗っつったらチョー有名だぜ?
 うちの中学にも、何人か信者がいたよ。

 自由な奴でチームを名乗らない、神出鬼没な一匹狼。

 って言われてたぜ」

「へえ」


 明日斗らしい呼び名だな。

 春風が廊下の塵を舞い上げる。


「お前、そんな奴のカギ預かったんだな。
 すげえけど、ヤバさも倍増だぜ……」

「なんで?」

「バカッ、東条清春は柴鳳の次期トップと見込んで、天ヶ瀬明日斗にそのカギ渡したんだぜ?
 それをお前が持ってたら、柴鳳からの制裁は確実だよ……。

 それに天ヶ瀬明日斗の評価も下がるかも……。
 どこの馬の骨ともわからない奴に簡単にカギ渡しやがって、的な」

「大丈夫。明日斗は気にしないよ。入るつもりもなかったみたいだし」

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